過労死等防止対策推進全国センター

過労死防止シンポ 職場環境改善を訴え 弁護士ら参加 松山 /愛媛 毎日新聞2016/11/8

11月の「過労死等防止啓発月間」に合わせたシンポジウム(厚生労働省主催)が、松山市であった。約50人が参加し、過労で病気を発症した男性の家族や弁護士らが、過労死を防ぐためには職場環境の改善が重要であることなどを訴えた。

愛媛労働局などによると、2015年度に県内で自殺した289人のうち、過労が原因だったと労災認定されたのは1人のみ。しかし自殺者の約4分の1は労働者とされ実態は不明。松山東雲短大の桐木陽子教授(現代ビジネス学)は「職場でメンタルヘルス対策環境を整えることは急務だ」と語った。

パネルディスカッションでは、過労によるうつ病と診断された男性の母親が「(息子は)高校卒業後すぐに工場で働き、定時で帰宅したのは最初の1週間だけ。帰宅時間も段々遅くなり、徐々に表情は暗くなって12月に自殺未遂をした」と明かした。さらに母親は「調べてみると休憩時間は少なくて残業は多く、ミスのたびに先輩から小突かれたりしていた」と話し、「利益優先ではなく、社員の健康を第一に考えてほしい」と訴えた。

過労死などの問題に詳しい中尾英二弁護士(愛媛弁護士会)は、自らが担当した裁判の実例を紹介。過労で自殺したというある企業の営業社員と、あるカラオケ店の雇われ店長は「いずれも20代で真面目な性格だった」とし、「相談するところがあればこうはならなかった」と悔やんだ。

また、労働問題に精通し、過労死弁護団全国連絡会議代表幹事も務める松丸正弁護士(大阪弁護士会)は、広告代理店最大手・電通の新入社員だった女性が過労で自殺した問題に言及。「真面目で、他人への配慮がある人ほど自ら労働時間を少なく申請しがち。会社が労働時間を適正に把握しないと(労働者のための)労働基準法は死ぬ」と強調した。【黒川優】